原田和子統括看護部長 編著 |
第1章 コミュニケーション・アセスメントの基本技術
第2章 生活援助の基本技術
第3章 医療的ケアの基本技術
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診療報酬の改定でますます問われる看護の質
「新人ナースがニコニコと患者さんと向き合っている姿を見るのが、先輩ナースとして一番ホッとする瞬間です」。そういうプリセプターの笑顔は、病棟全体を明るくします。その新人ナースはきっと、患者さんと向き合い、基礎看護の1つであるコミュニケーションの「コツ」が少しわかってきて、自信をもつことができたのでしょう。
学生時代にナースは、基礎看護学で人体の構造や機能、病態や病理学を学びます。看護技術については、臨床現場で使用している注射器や注射針、点滴ルートセット、手袋などの器具を実際に使用し、看護理論などの知識を活かした看護の技を教室で実習します。臨地実習では、患者さんのケアを通して実際の看護の場面を学習します。
しかし、国家資格を取得して「いざ」張り切って臨床の仲間入りをしても、すぐに採血や点滴などに携われることはほとんどありません。新採用者は看護技術について、まず各施設の教育プログラムに沿った臨床実施研修を受講します。その後、チーム活動のなかで支えられながら、それぞれの目標に沿って自立へと向かいます。患者さんとの信頼関係を築くためには、さらに知識や技術を高めることが求められています。
2006年の診療報酬改定で、看護基準「7:1入院基本料」が設けられたことは、記憶に新しいことと思います。これにより、さらに手厚い看護が求められ、高度な知識や技術、技能をもつナースがどれだけ配置されているかを各施設が問われることになりました。
選ばれる病院への第一歩は、ナース同士が「育み合う」教育環境づくり
患者さんは同じ入院費用を掛けるなら、確かな技能をもつ医師やナース、コメディカルで構成された良質の医療を提供できる医療チームがあって、看護サービスの良い病院を選ぼうと考えます。選ばれる病院になる第一歩は、学んだ知識を患者さんに「活かす」看護実践能力を育み合うこと。教育体制を整備し、看護職員研修を通して支え合うことです。
では、新人ナースにどのように教えるのか、先輩として後輩はどのように向き合うのか、効果的な教授法は?つねに悩むところだと思います。しかし、新人とはいえ学校教育を終え、国家試験をパスし、社会人として歩みだした後輩です。自律した職業人を育てる臨床教育が重要な課題となります。
新人ナースは自己の経験がまだ乏しくても、患者さんに差し迫った問題の解決に取り組もうとがんばります。このとき、先輩ナースが患者さんから学ぶべきことを可視化して教えること、学習者と学習援助者とのあいだに充実した教育的環境が成立します。たとえば、皮膚が「カサカサ」で脱水傾向がり、血管が硬く「コリコリ」した患者さんを前にして、何ゲージの注射針を使用し、どこから、どの角度で血管内に刺し込むかを考えると、失敗は許されないという緊張のあまり手が震え、心臓が「ドキドキ」している新人ナースがいたとします。そこに先輩ナースが手を沿えて、駆血帯で縛る位置や血管を固定する「コツ」を伝えるようにすると、学び、教えるチャンスとなります。このように、自立するまで新人ナースが先輩とともに行動できる教育環境が要にあれば、それぞれが多くの患者さんからの学びを確実にすることができます。
今日の新人も、明日は看護技術の達人に
先輩ナース(学習援助者)は、患者さんのケアに必要な知識、技術などを新人がどのレベルまで習得しているのか、また内心の意欲や不安、焦りなども行動や態度から把握し、評価します。同時に、新人がいつまでに、どのように、どこまで未達成項目をマスターするのかよく話し合い、苦手なものを克服する目標をいっしょに立てます。
いっぽう、新人は日々の業務からも、患者さんとの対話を通してコミュニケーションの「コツ」をつかんだり、ベッドメーキングや清潔の援助を実施したりしながら、患者さんの気持ちを理解できるようになっていきます。体位変換や移送を先輩とともに実施しながら、時に褒められ、時に課題を与えられ、工夫や考え方や看護技術の「コツ」などを学び合い、育み合う。そのような環境のなかで多くの患者さん体験を積み重ね、新人ナースがいつか、看護技術「達人」として成長することを願っています。この本が、現場の実践の只中にあって、活き活きと看護実践力を伸ばすことにお役に立てていただければ幸せです。
これからの時代に選ばれる病院は、確かな診断や治療の技術もさることながら、きっと職員が「元気ハツラツ」で笑顔を絶やさず、お互いに信頼し合っていて自分の病院をたいせつに思い、人間関係も良い職場だと思います。それが、患者さんも職員も「安心、安全、満足」に医療を受け、医療を提供できる病院の基本だと信じています。
2010年3月
社会医療法人きつこう会法人本部
統括看護部長
原田和子